後遺障害等級認定基準概略

高次脳機能障害の等級認定のしくみ②

後遺障害等級認定基準概略

 自賠責保険(共済)において、高次脳機能障害が疑われる事案として審査の対象とされた場合、次にどのような基準で後遺障害等級が認定されるのかを把握しておく必要があります。

 この認定基準に沿った医証を提出することで、適正な後遺障害等級の認定が受けられることになるのです。

 高次脳機能障害として認定を受けるための大前提として、自賠責保険(共済)にいう高次脳機能障害とは、脳の器質的病変に基づくものをいいますので、この器質的病変の存在がMRI、CT等によって認められる必要があります。

 脳の器質的病変の存在がMRI、CT等によって確認できない場合、どれだけ高次脳機能障害と疑われる症状が出ているとしても、自賠責保険(共済)では高次脳機能障害とは認定されず、非器質性精神障害として9級の認定がなされるにとどまります。(非器質性精神障害についてはこちら)

 この画像所見の要件をクリアすることを前提に、自賠責保険(共済)では、①高次脳機能障害の程度、②身体性機能障害の程度及び③介護の有無・程度を踏まえて総合的に評価を行うとしています。(画像所見要件の詳しい説明はこちら)

 そして、この総合的評価を踏まえて1~9級の認定がなされることになります。

 ここで、総合評価というとあいまいな基準にも思えますが、実際には、労災の基準も参考に評価がなされています。

 ですので、労災の高次脳機能障害の認定基準を知っておくことが有益です。

 労災では、高次脳機能障害の評価要素として、

  1. 意思疎通能力
  2. 問題解決能力
  3. 作業負荷に対する持続力・持久力
  4. 社会行動能力

以上の4つの能力の喪失の程度を掲げており、この喪失の程度に応じて等級認定がなされます。

意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)

A

 多少の困難はあるが概ね自力でできる→わずかな能力喪失

B

 困難はあるが概ね自力でできる→能力が多少失われているもの

C

 困難はあるが多少の援助があればできる。→能力の相当程度が失われているもの

D

 困難はあるがかなりの援助があればできる→能力の半分程度が失われているもの

E

 困難が著しく大きい→能力の大部分が失われているもの

F

 できない→能力が全部失われているもの

問題解決能力(理解力、判断力等)

A

  1. 特に配慮してもらわなくても、職場で他の人と意思疎通をほぼ図ることができる
  2. 必要に応じこちらから電話をかけることができ、かかってきた電話の内容をほぼ正確に伝えることができる

B

  1. 職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、ゆっくり話してもらう必要が時々ある
  2. 普段の会話はできるが文法的な間違いをしたり、適切な言葉を使えないことがある

C

  1. 職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためにはたまには繰り返してもらう必要がある
  2. かかってきた電話の内容を伝えることはできるが、時々困難を生じる

D

  1. 職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある
  2. かかってきた電話の内容を伝えることに困難を生じることが多い
  3. 単語を羅列することによって、自分の考え方を伝えることができる

E

  1. 実物を見せる、やってみせる、ジェスチャーで示す、などのいろいろな手段と共に話かければ短い文や単語くらい理解できる
  2. ごく限られた単語を使ったり誤りの多い話し方をしながらも何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが、聞き手が繰り返して尋ねたりいろいろと推測する必要がある

F

  1. 職場で他の人と意思疎通を図ることができない。

作業負荷に対する持続力・持久力

A

  1. 複雑でない手順であれば理解して実行できる。
  2. 抽象的でない作業であれば1人で判断することができ、実行できる

B

AとCの中間

C

  1. 手順を理解することに困難を生じることがあり、たまには助言を要する
  2. 1人で判断することに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする

D

CとEの中間

E

  1. 手順を理解することは著しく困難であり、頻繁な助言がなければ対処できない
  2. 1人で判断することは著しく困難であり、頻繁な指示がなければ対処できない

F

  1. 課題を与えられてもできない

社会行動能力(協調性等)

A

 概ね8時間支障なく働ける。

障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない

B

 AとCの中間

C

 障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり、それなしには概ね8時間働けない

障害に起因する不適切な行動がたまには認められる

D

 CとEの中間

E

 障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない

障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる

F

 持続力に欠け働くことができない

社会性に欠け働くことができない

後遺障害等級認定手続の問題

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